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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)261号 判決

一 請求の原因一ないし三(特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨、審決の理由の要点)については、当事者間に争いがなく、本願発明と引用例記載の発明が審決摘示に係る相違点(イ)、(ロ)及び原告主張の密度、通気度に関する点を除き構成上の差異がないことも当事者間に争いがない。

二 本願発明の目的

本願発明が審決摘示に係る「アスフアルト等の実質的に炭化水素よりなる物質との相溶性が良い原料ポリオールを使用した、大量のアスフアルト等の実質的に炭化水素よりなる物質を均一に混入し、しかも生成したウレタンフオームからこれらの物質が分離しないよう安定に含有するウレタンフオーム」に関する基本技術を有していることは当事者間に争いがなく、いずれも成立に争いのない甲第三ないし第五号証(本願発明の出願当初の特許明細書、昭和五七年一一月一日付及び昭和五八年五月二〇日付各手続補正書。以下、これらを総称して「本願明細書」という。)によれば、従来、アスフアルト等の炭化水素よりなる物質(以下、「歴青質炭化水素物質」という。)を一般のポリウレタン用ポリオールに配合し、ウレタンフオームを得る試みがなされていたが、この試みは良好なフオームが得られなかつたり、或いはできたとしても実用に供せられる良好な物性のものは得られず、また、右歴青質炭化水素物質の添加量が多いと均一に混合攪拌反応させることができず、例えできたとしてもその歴青質炭化水素物質が浮き出し(breed)、べたつき、強度も低下する等の欠陥があつたこと、一方、予め製造したウレタンフオームに歴青質炭化水素物質の揮発性溶剤溶液を含浸した後、乾燥し、歴青質炭化水素物質を含有したウレタンフオームを得る方法も行われているが、この方法では、大量の揮発性溶剤を必要とし大気汚染の問題があること、溶剤蒸気による人体或いは火災に対する危険性があること、更には溶剤乾燥のため長時間を要し、生産性が低いこと、使用にあたり基材を汚したり或いは取扱い時にべたつくこと、更には、防水性が低い等、いろいろな問題を持つていたこと、そこで、かかる従来技術の欠陥を是正すべく、本願発明は、大量の歴青質炭化水素物質を均一に混入し、しかも生成したウレタンフオームからこれらの物質が分離しないよう安定に含有する、防水性のほか、気密性、吸音性、耐水性、耐薬品性あるウレタンフオームを得ることを課題として、その特許請求の範囲に係る構成を採用したものであることが認められる。

三 引用例記載の発明

引用例には審決が認定するとおりのタールウレタン系発泡性組成物が記載されていることについては、当事者間に争いのないところ、成立に争いのない甲第二号証(一頁右下欄一〇ないし一二行、二頁左上欄末行ないし左下欄三行、三頁右下欄七ないし一一行)によれば、引用例記載の発明は、ひまし油誘導体ポリオールと歴青質炭化水素物質を使用して、防水性、耐久性、断熱性、耐水浸透性等に優れた、道路橋及び一般道路などの舗装材または海中構造物の防食材として有用なタールウレタン系発泡性組成物の提供を主たる目的とするものであることが認められる。

四 取消事由に対する判断

1 本願発明と引用例記載の発明との共通点について(取消事由(一))

(一) 前記のように、本願発明が審決摘示に係る事項をその基本技術とすることは当事者間に争いのないところであり、引用例記載の発明は、ポリオールとしてひまし油誘導体を使用するものであることは前認定のとおりである。しかして、ダイマー酸誘導体ポリオール同様長鎖の炭化水素基を有するひまし油誘導体が、その程度は別として、歴青質炭化水素物質に対し相溶性があること自体は原告も明らかに争わないところであり(成立に争いのない甲第六号証によつても、ひまし油誘導ポリオールの相溶性を認めることができる。)、また、前掲甲第二号証(三頁左下欄一五頁ないし右下欄二行)によれば、引用例には「本発明の発泡性組成物による一般道路または道路橋などへ適用できる発泡体の形成法は、ポリオール化合物と歴青質成分との混合物またはポリイソシアネート化合物のいずれかに発泡剤、気泡安定剤、気泡促進剤を混合せしめて二液形とし、舗装時にこれらを二頭式吐出ノズルを有する塗装機などで常温またはそれ以上の温度で塗装することによつて本発明の目的とする発泡体が得られる。」との記載が存在し、これら混合液を得るに際して分散剤の使用等別途処理をしていないことが認められるから、引用例記載の発明において、ポリオールとしてのひまし油誘導体と歴青質成分とが良好な相溶性を有することは明らかである。更に、前同号証によれば、引用例には、「歴青質成分の配合量はポリオール化合物一〇〇重量部に対して約二〇~三〇〇重量部であつて、この範囲より少ないと耐水性が低下し、多くなると機械的強度が悪くなるので好ましくない。」との記載(三頁左下欄三ないし六頁)、及び、「かくして形成された発泡体は気泡率約一〇~八〇%、圧縮強度約二〇kg/cm2(二〇℃)以上、引つ張り強度約一五kg/cm2(二〇℃)以上であるために耐摩耗性、耐水浸透性、車両通行性、耐衝撃性、耐久性などが著しくすぐれている。」との記載(同頁右下欄七ないし一一行)の存在することが認められるところから、生成されたウレタンフオームの耐水性の付与は歴青質成分の混入に係るものであり、また、その製品が耐水浸透性、耐久性等を有していることからみて、歴青質成分が分離することなく生成されたウレタンフオーム中に保持されているものと認めることができる。

以上によれば、引用例記載の発明の基本技術も、本願発明と同様、歴青質炭化水素物質との相溶性が良い原料ポリオールを使用した、大量の歴青質炭化水素物質を均一に混入し、しかも生成したウレタンフオームからこれらの物質が分離しないよう安定に含有するウレタンフオームの提供にあるものと認めることができる。

よつて、本願発明と引用例記載の発明との共通点に関する審決の右認定に誤りはない。

(二) これに関し、原告は、甲第六号証(実験報告書)を根拠に、引用例記載の発明におけるひまし油誘導体ポリオールは、本願発明のダイマー酸誘導体ポリオールに比べて歴青質炭化水素物質との相溶性において劣るから、歴青質炭化水素物質との相溶性を良好ならしめることを意図して使用されるものではないと主張し、更に、引用例記載の発明において相溶性を良好にしているのはポリイソシアナート化合物と多価アルコールとの反応生成物(プレポリマー)または芳香族系イソシアナート化合物である旨主張する。

しかしながら、前掲甲第三号証(九頁九ないし一八行)によれば、本願明細書には本願発明の歴青質炭化水素物質としてストレートアスフアルト、ブローンアスフアルト、プロセスオイル、コールタール及び石油系のオイルタール等のタール類、石油樹脂等が例示されていることが認められ、また、前掲甲第三号証(五頁五ないし末行)によれば、ダイマー酸誘導体に関しても、ダイマー酸と短鎖のジオール、トリオールまたはポリオールとの反応生成物であるダイマー酸ポリエステル、ダイマー酸とポリアルキレングリコール、ポリアルキレントリオールまたはひまし油等の長鎖のポリオールとの反応生成物であるダイマー酸ポリエステル、右各ダイマー酸ポリエステルのアルキレンオキサイド付加重合物、ダイマー酸とその他のジカルボン酸と各種の短鎖ジオール、トリオールまたはポリオールとの反応生成物、ダイマー酸とアルキレンオキサイドとの反応生成物等数多くのものが包含されることが認められるのに対し、前掲甲第六号証によれば、同号証には単にアスフアルト(日本石油社製、ストレートアスフアルト八〇/一〇〇〔アスフアルト針入度JIS K二二〇七(一九八五年)による〕)及びタークロン一八〇(吉田製油所製タール)の、ダイマー酸ポリエステルポリオール(ダイマー酸とジエチレングリコールとの縮合物、水酸基価七二、酸価一・〇)、ひまし油(伊藤製油社製精製ひまし油)に対する相溶性の実験結果が示されているにすぎないものであることが認められ、本願発明のダイマー酸誘導体ポリオールと引用例記載の発明におけるひまし油誘導体ポリオールとの歴青質炭化水素物質に対する相溶性の優劣を、同号証におけるような限られた実験例に基づいて、これを一概に論ずることはできないから、甲第六号証を根拠とした原告の右主張は理由がない。

また、引用例において歴青質炭化水素物質との相溶性を良好にしているのはイソシアナート系化合物と多価アルコールとの反応生成物(プレポリマー)または芳香族系であるイソシアナート化合物であると主張する点については、前掲甲第二号証によれば、引用例の全記載によるもこれを認めるに足る記載は見当たらないうえ、引用例記載の発明におけるポリオールはひまし油誘導体ポリオールに限定され、且つ、前掲甲第二号証(三頁右上欄四ないし六行)によれば、引用例には引用例記載の発明の右歴青質成分としてコールタール、膨潤炭、オイルガスタール、ピツチ類が例示されていることが認められるから、アスフアルトとポリオール一般についての相溶性について述べた成立に争いのない甲第一〇号証の記載(五頁左上欄五ないし一二行)をもつて右原告の主張の裏付けとすることも相当でなく、原告の同主張も採用できない。

(三) 更に、原告は本願発明と引用例記載の発明とでは基本技術を異にする理由として、両発明の技術的課題(目的)の差異を主張する。しかし、いずれも成立に争いのない乙第二号証の一ないし八(ポリウレタン、一九六〇年三月三日、槙書店発行)及び乙第五号証の一ないし四(プラスチツクフオームハンドブツク、昭和四八年二月二八日・日刊工業新聞社発行)によれば、ウレタンフオームは原料の種類や製造法の適当な選択によつてきわめて多種多様な製品が得られることが本願発明の出願前において広く知られていたことが認められるから、ウレタンフオームにどのような性質(防水性、気密性等)をもたせるかはその製品の用途等の使用目的に応じて適宜選定されるべき事柄であるということができるし、両発明がともに防水性を課題とする点では共通しているのである。仮に両発明の間に原告主張のような課題、用途の差異があるとしても、そのこと故に、両発明の前記のような歴青質炭化水素物質とこれと相溶性ある原料ポリオールを用いて原料物質に右炭化水素物質が均一に混入し安定したウレタンフオームを提供するという基本技術それ自体が相違すると認めることはできず、原告の右主張も理由がない。

2 相違点の看過について(取消事由(二))

前記のように、本願発明には、密度に関して、〇・〇四~〇・二〇g/cm3との限定が、通気度に関して、一〇mm厚みにおける通気度が零よりも大きく六〇cc/cm2/sec以下との限定が、それぞれ付されていることが認められるのに対し、引用例には生成されるウレタンフオームの密度及び通気度に関する記載がないことで両発明が相違していることは当事者間に争いのないところである。

しかしながら、密度の点については、前掲甲第三号証及び同第五号証によれば、本願明細書には、特許請求の範囲のほか、発明の詳細な説明の項に、「密度は好ましくは〇・〇四~〇・二〇g/cm3である。」との記載(甲第三号証一五頁一四ないし一六行、同第五号証一頁一六ないし一七行)があるのみで、これについての技術的意義についての記載が全くないところから、本願発明の密度範囲の限定に特別の意義を認めることはできず、また、前掲乙第五号証の一ないし四(二四九頁表Ⅲ・一一2)によれば、本願発明の限定する右密度範囲は、軟質、半硬質、硬質にかかわらず、ポリウレタンフオームとしては普通の範囲であることが認められるから、本願発明と引用例記載の発明において、生成されるウレタンフオームの密度の点において差異があると認めることはできない。

一方、通気度の点についてみるに、その下限である「通気度が零よりも大きく」との要件は、フオームの気泡構造が連続気泡であることから当然に生ずる要件であるから、前記(ロ)の相違点として既に認定されている事項であるといい得るが、その上限である「六〇cc/cm2/sec以下」なる要件について、前掲甲第三号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の項には、「本発明のウレタンフオームの通気度は、約六〇cc/cm2/sec以下になつた場合に防水性が良好になり、かつすぐれた吸音性を示し、特に、防水性は通気度が三〇cc/cm2/sec以下の時にすぐれ、吸音性は〇・五以上、三〇以下が特にすぐれる。一方、通気度が六〇cc/cm2/secを越えると、おどろくべきことに、急激に、防水性は低下し、吸音率も低下することを発見したのである。」との記載(七頁九ないし一六行)の存することが認められ、この記載によれば、通気度の上限について本願発明は技術的見地から説明しているものということができる。そして、前掲甲第三号証によれば、本願明細書には、本願発明におけるアスフアルト混入ウレタンフオームにおける、通気度と吸水率との関係を示すグラフ(図1)及び通気度と垂直入射法吸音率との関係を示すグラフ(図2)が添付されており、右記載事実を裏付けていることが認められる。しかしながら、大量のアスフアルト等の実質的に炭化水素よりなる物質を均一に混入し、しかも生成したウレタンフオームからこれらの物質が分離しないよう安定に含有することによつて防水性、吸音性等の効果が期待できる本願発明のポリウレタンフオームにおいて、通気度があまり大きすぎれば防水性や吸音性を失い、したがつて、ある程度の防水性や吸音性を付与するためには通気度に上限があるであろうことは当業者であれば当然に考慮することであり、その上限の具体的数値も当業者が本願発明を実施するに当たつて適宜決定し得るものであると解することができるうえ、右各グラフ(図1及び2)によれば、通気度と吸水率及び吸音率の関係は連続性ある増減傾向を示しており、通気度が六〇cc/cm2/secを境にしてその効果に顕著な差異が生じているとは認められないから、本願発明においてウレタンフオームの通気度に関する上限値についても格別の技術的意義を認めることはできない。

3 相違点(イ)に対する判断について(取消事由(三))

本願発明に使用されるダイマー酸誘導体ポリオールも、引用例記載の発明に使用されるひまし油誘導体ポリオールも、高級不飽和脂肪酸から誘導されたポリウレタン原料の活性水素含有化合物として本出願前周知のものであることについては当事者間に争いがなく、これらのポリオールがいずれも歴青質炭化水素物質との相溶性があるポリオールであることは前認定のとおりである。

そして、いずれも成立に争いのない乙第三号証(特開昭四九―六〇九四号公報、一頁右下欄八行ないし二左上欄一一行)、乙第八号証(特公昭四四―一四九五六号公報、一頁左欄)及び乙第九号証(特公昭四六―三四一一七号公報、一五ないし一六欄)によれば、軟質、硬質を問わず、歴青質炭化水素物質をポリウレタンの原料であるポリオール、ジイソシアナートとともに使用してポリウタレンフオームとすること自体は本出願前において広く行われていたことが認められ、前掲乙第二号証の一ないし八(三三頁一〇ないし一二行、九六頁一八ないし二六行)によれば、本出願前において、ダイマー酸誘導体ポリオールが、ポリウレタンのポリオール成分として、ひまし油誘導体ポリオールと同様よく使用されていたことが認められ、しかも、前掲乙第二号証の一ないし八(一〇三頁一ないし二行)によれば、ダイマー酸ポリエステルが疎水性を有することも本出願前において周知であつたことが認められる。そして、前認定によれば、引用例によつて、ポリオール成分としてひまし油誘導体ポリオールを使用してポリオール化合物一〇〇重量部に対して約二〇~三〇〇重量部という多量の炭化水素物質をポリウレタンフオーム中に含有させることが知られているのであるから、生成したウレタンフオームにおけるウレタン樹脂自身をも疎水化し、ウレタンフオームに防水性等を付与する目的のもとに、引用例記載の発明におけるひまし油誘導体ポリオールに代えて、本出願前、ひまし油誘導体ポリオールと同様に、ポリウレタンのポリオール成分としてよく使用され、且つ、高級不飽和脂肪酸から誘導されたポリウレタン原料の活性水素含有化合物として周知であり、また、疎水性を有するものとしても周知であるダイマー酸誘導体ポリオールを適用することは、当業者であれば容易になし得る程度のことであると認められる。

なお、原告は、本願発明は、ダイマー酸ポリオールを原料ポリオールとして用いることによりウレタンフオームにおけるウレタン樹脂自身を疎水化して接触角が九〇度より大きい疎水性樹脂となすもので、ダイマー酸ポリオールを当業者が容易に気付くことは不可能である旨主張する。しかしながら、前記のとおり、本出願前においてダイマー酸誘導体ポリオールが疎水性を有することが周知であつたと認められるから、右主張は理由がない。

4 相違点(ロ)に対する判断について(取消事由(四))

成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(実用プラスチツク用語辞典、昭和四二年一〇月二〇日、株式会社プラスチツク・エージ発行、五〇三頁「ポリウレタンフオームの項)、前掲乙第二号証の一ないし八(七三頁二ないし末行、一一三頁三ないし五行)及び乙第五号証の一ないし四(二六五頁六ないし一六行)によれば、ウレタンフオームは、硬質度によつて、軟質(可橈性)、半硬質、硬質に分類され、軟質フオームは連続気泡から、硬質フオームはほとんど独立気泡からなるもので、これら硬質度を決定する最も大きな因子はその基本骨格における架橋度であるところ、この架橋度は原料の種類によつて調節でき、また、原料の種類や製造法の適当な選択によつて、極めて多種多様な製品が得られ、その用途も多岐にわたるものであることが認められ(なお、ポリウレタンフオームは、連続気泡のものも独立気泡のものも、原料のポリオールを適宜選択することによつて、製造する技術が確立していることについては当事者間に争いがない。)、ポリウレタンフオームを連続気泡のものとするか独立気泡のものとするかは、その製品にどのような性質を持たせるか、その製品をどのような用途に使用するかにより、適宜選択されるべき事柄であるということができる。

一方、引用例記載の発明におけるポリウレタンフオームが防水性及び耐水浸透性に優れたものであることは前記のとおりであるが、前掲甲第二号証(三頁左下欄三ないし六行)によれば、引用例には「歴青質成分の配合量はポリオール化合物一〇〇重量部に対して約二〇~三〇〇重量部であつて、この範囲より少ないと耐水性が低下し、」との記載の存することが認められるところから、引用例記載の発明におけるポリウレタンフオームが防水性及び耐水浸透性に優れたものであるとの効果は同フオームが多量の歴青質成分を含むことによるものであると認められ、かように多量の歴青質炭化水素物質を含む引用例記載の発明において、原料ポリオールを変えることによりポリウレタンフオームを連続気泡のものに変えた場合にその効果が阻害される事情は認められないから、引用例記載の発明において、ポリウレタンフオームを原料ポリオールにより連続気泡のものとするか独立気泡のものとするかを適宜選択しても、これによつて同フオームの有する防水性及び耐水浸透性が維持されるであろうことは、当業者の当然に予測し得る事柄であるといえる。

以上によれば、引用例記載の発明におけるポリウレタンフオームが例え独立気泡のものであるとしても、これをその用途等に応じて、本願発明のごとく、連続気泡のものに変える程度のことは、格別困難なことではないと解するのが相当であり、これに反する原告の主張は採用することができない。

5 本願発明の作用効果の判断について(取消事由(五))

引用例記載の発明において、大量の歴青質成分の混入によつて、生成されたウレタンフオームに耐水性が付与され、その製品が耐水浸透性及び耐久性を有していると認められること、及び、同発明において、ひまし油誘導体ポリオールに代えてダイマー酸誘導体を用いること、フオームの構造として連続気泡構造を採用し、得られるポリウレタンフオームの通気度を一定の範囲に限定する程度のことは当業者にとつては容易であると認められることについては、前記のとおりである。また、ウレタンフオームは原料の種類や製造法の適当な選択によつてきわめて多種多様な製品が得られることが本願発明の出願前において広く知られ、ウレタンフオームにどのような性質(防水性、気密性等)をもたせるかはその製品の用途等の使用目的に応じて適宜選定されるべき事柄であることについても、前記のとおりである。そうすると、原告が本願発明の顕著な作用効果として主張する、連続気泡構造のウレタンフオームでありながら充分に実用上の使用に耐え得るような防水性を有するという作用効果は、公知のポリウレタンフオームですでに解決されている効果と、引用例に記載された独立気泡構造のものでアスフアルト等の実質的に炭化水素よりなる物質を均一に混入できたという効果の総和を著しく超えるものであるとは認められず、その作用効果の顕著性を理由に本願発明の進歩性を認めることはできないものといわなければならない。

6 以上によれば、審決は、本願発明のウレタンフオームが通気度に関して数値限定されている点で引用例記載の発明と相違することを看過したものではあるが、審決の認定する本願発明と引用例記載の発明との相違点及び右審決が看過した相違点はいずれも当業者が容易に想到し得る事柄であり、したがつて、本願発明は引用例の記載から当業者が容易に発明することができたものであるとして本願発明の進歩性を否定した審決の判断は、結論において正当であり、原告の主張する取消事由はいずれも認められない。

五 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却することとする。

〔編注〕本願発明の要旨(特許請求の範囲に同じ。)は左のとおりである。

(a) ポリオール一〇〇重量部、

(b) 融点あるいは軟化点が一五〇℃以下、常圧における沸点が二〇〇℃以上である実質的に炭化水素よりなる物質二〇~四〇〇重量部、

(c) 発泡剤、

(d) その他助剤及び

(e) ポリイソシアナート

を混合させた常温において可トウ性を有する連続気泡ウレタンフオームにおいて、

(イ) ポリオールとしてダイマー酸の誘導体ポリオールを使用し、

(ロ) 密度が〇・〇四~〇・二〇g/cm3であり、

(ハ) 一〇mm厚みにおける通気度が零よりも大きく、六〇cc/cm3/sec以下であることを特徴とする前記連続気泡ウレタンフオーム。

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